猫々蹴球

ねこねこしゅーきゅー、と読むと大吉です。デレステブログになりつつありますが、アニメ感想と投稿SS、サッカーもありますヽ( ´▽`)ノ

ヨーク戦記 第4話

『ヨーク戦記』

第4話 予想と必然の構図



「……見事だな……」
スクリーンに視線を固定したまま、ロアが感嘆の声をもらす。
その目に映るのは、今や完全に潰走状態となったアガルティアの大艦隊を示す光点だった。
主力到着後も後退を続けていたジグリム軍が、アガルティア軍の艦列がわずかに乱れた瞬間に突如として猛反撃を開始したのだ。
勝利の予感に勢いづいていたアガルティア軍が先を争うようにして艦列を乱した、まさに一瞬の隙だった。
『完璧……』
プレーツが思わずそう呟くほど、それは完璧な逆撃であった。
追撃の勢いがついたままのところへ、まともに砲火を受ける形となったアガルティア軍は、たちまち全面崩壊の危機に直面する事になったのである。
それが現実のものにならなかったのは、ハイルストーム元帥の後退命令が迅速だった為であり、アガルティア軍は潰走しながらもかろうじて致命傷は避ける事ができたのだった。

「……………」
スクリーンが暗闇に戻った後も、全員しばらく無言だった。
陽気なフランやエオリアでさえ、目の前で展開された敵将の完璧な用兵に軽口さえ出せずにいた。
「………凄いですね、グロウスター元帥って人は」
そんな重い空気の中、沈黙を破ったのはガリュードだった。
そしてそのあまりに素直な感想に、周囲の空気がふっと緩む。
「あのねえ……凄いって、そんな簡単に言わないでよ、ガリュードくん……」
「……大物だな、お前は」
ようやく普段の調子に戻ったエオリアとフランがそう言って苦笑する。
「しかしまあ、完璧としか言いようがないな、これは。普通気づかないぜ、あんな一瞬の隙は」
「そこへあの統制のとれたカウンターですからね……あれじゃ防御は、ほぼ不可能でしょうね」
続けて心底感心したように首を振るガルナとプレーツ。
2人とも同じ提督として、不謹慎ながらも賞賛の念を抑える事ができなかった。
敵の力を認める事も良将の条件……その定義にあてはめるならば、彼らも間違いなく良将の部類に入るだろう。

「ついでに言うなら、それだけじゃないな、あの動きは……気づいたか、ミナリー?」
突然のロアの一言に驚くガルナ達。
その視線がまずロアに、続いてミナリーに忙しく移る。
そして彼らが口を開くよりも早く、問いかけを受けた少女は、こくりとうなずいた。
「はい、提督。逆撃とほぼ同時に包囲態勢をとろうとしてますね、ジグリム軍は」
あっさりとそう言うと、再びスクリーンに先ほどの図形を表示させるミナリー。
「……どこが? ね、ねえ、ミーナ、全然わからないんだけど………」
「あ、ちょっと待ってくださいね、エオリアさん。えっと、倍率調整、プラス5……と」
続けてその一部、ジグリム軍の艦列の両翼部分を拡大する。
「この部分を見てください。ほんのわずかですが、ジグリムの両翼部隊が展開の準備をしていますよね?」
と、拡大された部分をカーソルで示しながら説明するミナリーと、それぞれの表情で見つめる一同。
ちょっと見方を変えれば、学校の授業に見えない事もない。
「……なるほど……言われてみれば。気づいたか、プレーツ?」
「……はい、たった今。たしかにミーナの言うとおりみたいです。ほんの少しですが、両翼に不自然な動きが見られますね」
まず理解したのは、やはり提督であるガルナとプレーツだった。
それに少し遅れてガリュードが「ああ」と感心したように指をぱちんと鳴らす。
更に数十秒後、フランとエオリアも「なるほど……」ともっともらしくうなずいたが、本当に理解したかどうかは顔の汗が物語っていた。

「まったく……こりゃ、本当にやっかいな敵だな……」
「ですね、アガルティア軍の後退命令がほんの少しでも遅れていたら、確実に包囲されて壊滅していましたね」
改めて敵将グロウスターの能力に驚愕するガルナ達。
と、同時に自分達の司令官と、その参謀の能力に対しても感嘆していた。
あの一瞬の変化から、ジグリムの包囲態勢を見破ったロアとミナリー。
当然だがこれは『視力がいい』と言った単純な問題ではない。
全体の状況把握能力と、並外れた戦術眼があってこそだった。
もっとも当の本人達は、
「やっぱり気づいてたか。もしも気づいてなかったら俺が説明しようと意気込んでたんだがなあ」
「えへへ、ごめんなさい、提督。ジグリム軍の両翼が、後退しながらちょっとづつ左右に開いていったんで、たぶんそうかなと思って」
などと、ほのぼのとした口調で会話しており、周りの尊敬の念などまるで気づいてはいなかったが。


「………で、どうなんだ、ロア。これから先、こいつと……グロウスターと戦う事になりそうか?」
0.5リス(20分)ほどの休憩の後、再び議論を開始したロア達………最初に口を開いたのは、ガルナだった。
「そうだな……敵さん、ここしばらくアガルティア方面の担当だったから直接戦う機会はなかったが……もしも世界大戦が始まれば……」
「……世界大戦………本当に起きるんでしょうか、そんな事が」
ガリュードがそう小さく呟く。
アガルティアから帰国したロアにその可能性を聞かされて以来、まだどうも実感が湧いていないのだった。
信頼するロアの話だからこそ真剣に聞いているのであって、もしこれがエグゾギルム提督あたりの意見だったら、間違いなく無視していただろう。
「あんまり考えたくないですけど……起きる可能性はかなり高いです。今回のアガルティアの敗北で……」
ロアに代わって、ミナリーが辛そうな表情で答えた。
彼女の場合、ロアにアガルティアのジグリム出兵の話を聞かされた時点でその危険性に気づいたので、ガリュードよりも深刻な不安に包まれていた。
「ああ、隣国のアガルティアが負けて、しかもまだ撤兵する気配がない……なかなか魅力的な誘惑だろうよ、これは。特に『大陸の覇者』とか『世界の盟主』とか言った肩書きを欲しがる連中にとってはな」
我ながら人が悪い言い方だな、とも思うが、ロアはその考えを否定する気にはならなかった。
これだけ大規模な出兵をしている以上、どうしてもアガルティア国内の守りは薄くなる。
しかもそれが長期化するとなれば、リンバーグとしてはまさに千載一遇のチャンスではないか。
『アガルティアが一度だけ大勝したところで満足して撤兵してくれれば、それが一番理想的だったんだけどな……』
ついそんな事まで考えている自分に気づき、やれやれといった感じのため息をつくロア。
自分達にとって都合のよすぎるその考えに、さすがに反省したらしい……が。

「ねえねえ、もしリンバーグが動いてもさあ、そんなの放っておけばいいんじゃない?」
殊勝にも反省していたところへ、恐ろしく気楽な一言を浴びせられて、ロアはイスからずり落ちそうになった。
……すぐ身近にもっと都合のいい事を考えている女性がいたようである。
「あのな……エオリア……」
「そういうわけにもいかないんですよ、さすがに」
ロアが慌てて体勢を直している間に、ガルナとプレーツが代わりにツッコミを入れてくれた。
「え~~?なんでよ~~?だってヨークには関係ない事じゃない」
「俺も今回だけはエオリアに賛成だな。なんで俺らがこんな馬鹿な戦争に巻き込まれなきゃならないんだよ」
『だけ』を強調しながらも、エオリアに賛同するフラン。
このように思った事を正直に言えるのは、彼らの長所だろうか、それとも短所だろうか。

「できれば俺もそうしたいけどな……リンバーグが動けば、アガルティアはまず間違いなく、我がヨークに軍事同盟を結ぶように要請してくるだろうよ」
ようやく立ち直ったロアがそう説明を始める。
軍事力の比率から言って、リンバーグはジグリムと連合してアガルティアに挑むだろう。
そうなればアガルティアが友好国であるヨークに同盟を要請するのは当然の選択なのだから、と。
「ヨークとしてはその要請を断るわけにはいかないんです、戦略上でも立場上でも。もし断った場合、どっちが勝っても、その後で攻撃される事になりますから」
それに続けてミナリーもまた、ロアの説明を補足する。
さすがにこれにはフランとエオリアも反論の余地がなく、ただ不機嫌そうに飲みかけのお茶を同時にすするだけだった……。


アガルティア、ヨーク連合VSジグリム、リンバーグ連合。
ロア達が予想したこの大戦の構図が、果たして現実のものとなるかどうか。
その答えが衝撃と共に姿を見せるのは、ほんの数日後の事である。


-続く-

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