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ねこねこしゅーきゅー、と読むと大吉です。デレステブログになりつつありますが、アニメ感想と投稿SS、サッカーもありますヽ( ´▽`)ノ

ヨーク戦記 第11話

『ヨーク戦記』

第11話 緒戦1 -新生ヨーク軍-



「………撃て!!」
ロアの指令と同時に、ヨークの艦隊から一斉に光の束が放たれる。
空を切り裂くようにして突き進む無数の光線。
それがジグリム艦隊に届いたと見えた瞬間、閃光と共にほぼ同数の光が襲いかかってきた。
「来ます!!」
わずかな時間差をおいて、ジグリム、ヨーク、それぞれの艦隊の前衛部が轟音と衝撃に揺れる。
両軍とも防御フィールドを展開してはいるが、射程内にいる以上は完全に攻撃を防ぐ事は不可能なのだった。
「前衛部隊に被弾!!損傷は軽微!!」
ヨーク軍総旗艦エルクアーツと、ジグリム旗艦ルービックの艦橋に全く同様の報告が飛びかい、続けて第2波、第3波の砲撃が開始される。
ヨーク軍の陣形は正面から見れば長方形に艦を配置した横列陣、ジグリム軍は先頭部隊が若干前進した凸形陣。
この時代の艦隊戦における、一般的な戦闘風景だった。

「これまでとはまるで違うな、ヨークは。司令官が代わったとは聞いていたが……」
戦闘開始から約3リス(2時間)後。
ジグリム軍旗艦ルービックの艦橋で、ハウジ・グラーフ大将は驚きと賞賛の混じった声で呟いた。
彼はこれまでの戦闘から、ヨークについて「騎士は強いが艦隊は弱い」との印象を持っていた。
だが今回、その印象に大幅な修正を加える必要が生じたようだ。
「たしか噂のロア・ジン・クランクハイトだったな、新司令官は。ようやく優秀な砲撃技術を活かせる司令官が現れたか……」
グラーフの言葉を証明するように、整然とした砲撃を次々に浴びせてくるヨーク軍。
もともと砲撃技術には定評のあったヨークだが、ロアの完璧な統制によって、その効果は何倍にも増幅されていたのだ。
「戦艦フレイド、撃沈!!」
「第3、第6部隊、共に被害多数!!」
先ほどから立て続けに入ってくる被害報告に、冷静なグラーフもさすがに顔をしかめる。
「感心している場合ではないか……。よし、全艦ひとまず後退!!敵が追撃に出たら右翼部隊で側面を攻撃、その後包囲態勢に移る!!」
このまま攻撃を続けても、防御に重点を置いたヨーク軍を破るのは難しい。
もし追撃してこなくても自軍の立て直しの時間は稼げる……そこまで計算してのグラーフの作戦だった。

「敵艦隊、後退していきます!!」
ヨーク軍総旗艦エルクアーツ。
オペレーターの報告にうなずくと、ロアは隣に座る参謀に視線を移した。
「……まず間違いなく罠だろうな。さしずめこちらを引っ張り出して、左右どちらかの部隊で側面攻撃ってとこか」
「はい、わたしも同感です。敵の右翼部隊は比較的損害が小さいですから、たぶんそっちを使うと思います」
ロアの言葉にそう応えるミナリー。
その間にもコンソールを忙しく操作し、刻々と変わる戦況の推移を画面に描き出していく。
「今のところ、明らかにこちらが優勢ですし、無理に仕掛ける必要もないですが……。どうします?このまま無視しますか?」
「いや、それだと敵が態勢を立て直してしまう。ここまで優勢に進んでいるのを無駄にしたくはないな」
そう言ってロアは何やら思案を始める。
彼は敵将ハウジ・グラーフの能力を軽視してはいなかった。
ここまではガルナ、プレーツを中心とした防御陣と、ヨーク伝統の砲撃技術によって優勢を保っているが、敵が態勢を立て直せばどうなるかわからない。
現にジグリム軍は致命的な被害を受ける前に後退し、反撃の機会をうかがっているのだ。
その事実だけでも、敵将が優れた判断力と指揮力を持っている事は明白だった。
「…………よし、ガルナ隊及び、プレーツ隊に連絡。内容は……」
正確に1デオ(24秒)の後、何かを思いついたように命令を出すロア。
それは専用回線を通じてすぐさま各部隊に伝わり、ヨーク全軍の陣形が微妙に変化を始めた……。


「ヨーク軍の一部が追撃してきます。データ照合……戦艦ベルネアを確認、ガルナ・ジン・ノーマの部隊です」
「意外だな、乗ってくるとは思わなかったが……。まあいい、右翼部隊は予定どおり攻撃準備にかかれ」
自軍の後退に合わせて追撃してくるヨーク軍に軽く驚きながらも、グラーフは的確に指令を飛ばす。
策にかかったのは50隻ほどの艦隊だったが、それだけでも叩ければヨークにとっては大きな損害のはずだった。
「それにロアファミリーとやらの1人らしいからな、士気を上げる意味でも討っておいて損はない……」
そう呟きながらグラーフはタイミングを計り、やがて万全の自信を持って叫んだ。
「………右翼部隊、前進!!」

「ようし、今だ!!側面の敵右翼に攻撃開始!!!」
ベルネアの艦橋全体に響くような大声でガルナが叫ぶ。
間髪いれず左に向き直った旗下の部隊から、一斉に砲撃が開始される。
ジグリム軍本隊と右翼部隊が、半包囲を完成させたかに見えた瞬間の事だった。
「被害多数!!本艦も左舷に被弾!!」
「う、撃ち返せ!!すぐにグラーフ大将の本隊も攻撃に加わる、そうすれば……」
予想外の先制攻撃に混乱するジグリム軍右翼だが、指揮官の叱咤の下、かろうじて反撃を開始する。
だがそこへ更に巨大な混乱が襲いかかってきた。
「ヨーク軍本隊、急速接近!!」
その報告に右翼部隊指揮官の唖然とした目がスクリーンに固定される。
彼の視線の先でヨーク軍本隊が、自軍の右側面から背後に向かって急速に展開していく。
「こ、これは………」
「撃て!!」
自分達が半包囲されている事に気づいたのとまったく同時だった、遠くエルクアーツの艦橋でロアが叫んだのは。

それを合図にロア、ガルナ、プレーツの部隊が三方向から一斉に砲撃を開始する。
たちまち無数の火球に包まれるジグリム軍右翼部隊。
『何故、策に乗せたはずの自分達が半包囲されているのか』
疑問に混乱しながらも、必死で応戦する兵士達だが、戦況は絶望的だった。
約60隻ほどで構成されていた右翼部隊は、瞬く間にその数を減らしていく。

「やられたな………こちらの包囲策を完全に逆手に取られたか……」
右翼部隊の救援指示を出しつつ、内心で呟くグラーフ。
わざとガルナの部隊を追撃に向かわせ、ジグリム軍右翼の前進を誘う。
そこへ全部隊を一斉に動かし、右翼部隊を半包囲……攻守の立場を逆転させる。
いわばロアはグラーフの作戦をそっくりそのままはね返したのだった。

「ジグリム軍本隊、来援!!」
「よし、全軍後退。とりあえずこれで十分だ」
エルクアーツで指揮をしていたロアが、オペレーターの報告に応え攻撃を停止させる。
本隊が来た以上、今度は敵の正面にいるガルナ隊が危機に陥る。
そうなる前に後退し、再び防御態勢を取らなくてはならなかったのだ。
「…………」
自軍が後退していく中で、ロアの視線がモニターの一つに固定される。
今や艦隊の残骸と化したジグリム軍右翼……それを複雑な表情で見ていたロアだが、やがて一つ首を振るとミナリーの方に向き直った。
「地上の戦況は……フラン達の様子はどうだ?」
「あ、はい。えっと…………」
そんなロアの様子に少し心配そうな顔をしていたミナリーが、慌ててコンソールを操作する。
「こちらエルクアーツ、地上部隊応答してください。繰り返す、地上部隊……あ、エオリアさん、そちらは大丈夫ですか?」
通信回線がつながったらしく、インカムを通じて短い会話がかわされる。
もちろん内容は聞こえないが、ミナリーの表情から地上の戦況はそう悪くないようだ。

「……はい……はい、了解しました。でも油断はしないでくださいね?」
最後に注意すると、ミナリーはインカムを外しながらロアに報告する。
「地上の方もこちらが優勢のようです、提督。ただ、依然として敵装兵機部隊の隊長が不明なのは気になりますけど……」
「そうか……ありがとう、ミナリー」
そう小さく礼を言ったロアは、すでにいつもの表情に戻っていた………少なくとも表面的には。


-続く-

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