猫々蹴球

ねこねこしゅーきゅー、と読むと大吉です。デレステブログになりつつありますが、アニメ感想と投稿SS、サッカーもありますヽ( ´▽`)ノ

ヨーク戦記 第13話

『ヨーク戦記』

第13話 緒戦3 -プラーナ・コントロール-



激突した剣と剣が、金属音と共に火花を飛び散らせる。
その度に操縦席が衝撃に揺れ、コンソールの計器類が悲鳴を上げる。
一瞬の反応の遅れが死に直結する、己の技量だけが頼りになる世界。
ヨーク騎士ガリュード・ジン・ヴラッツェンとジグリム騎士クルト・カルネビークの戦いは、そんな世界の中で行なわれていた。

「手強い……」
剣撃の狭間、ドルファーの操縦席でガリュードが額に浮かんだ汗を拭う。
これまで戦った中で、まず間違いなく最強クラスに位置する敵が目の前にいる。
なのにその汗は冷や汗とは違った。
確かに死への恐怖はあるのだが、それを上まわる高揚感が全身に満ちている。
「!!」
そんなガリュードの視線の先でバーウェルが動いた。
……かと思った時には、すでに剣の届く間合いまで接近し、その刃を振り下ろしてくる。
先ほどまでの動きよりも更に速度を増したクルトの斬撃……だが対するガリュードの反応も負けずに速かった。
「この……っ!!」
強烈な斬撃を剣で受け止めたガリュードは、そのまま横薙ぎにバーウェルの胴体部へと斬りかかったのである。
「うおっ!?」
バーウェルの胸部装甲の一部が、その一撃で弾け飛ぶ。
直撃していればこの程度のダメージでは済まなかっただろうが、クルトの回避能力が損傷を最小限に抑えていた。
「まだだっ!!」
それでもその一撃をきっかけに形勢がガリュードに傾き、立て続けの斬撃がバーウェルに襲いかかる。

「……っと……!! ふう……ヨーク最強って噂も、あながちデマじゃなさそうだな。フランとエオリアさん以外にもこんなのがいたとはね……」
ガリュードの連続攻撃をギリギリの間合いでかわしながら、クルトが小さく呟いた。
彼も「ヨークのガリュード」の噂は何度か聞いてはいたが、これほどの剣腕だとは正直思っていなかったのだ。
しかも現在まだ10代の若さ……これからまだまだ成長していく可能性は極めて高い。
「ジグリムの将来の為にはここで倒しておくべきなんだろうな……同じ騎士としてはめちゃくちゃ惜しいけど……」
そんな事を考えていたクルトだったが、突然の計器類の反応に意識をモニターに集中させる。
ドルファーの機体全体を強力なプラーナが包んでいるのが、視界に飛び込んできた。
「技か……!?」
操縦桿を握り直したクルトに向かって、凄まじい速度で突進してくるドルファー。
高速移動の最中、そのプラーナが今度は剣に集まり、漆黒の刃を光らせる。
「天翔空裂!!」
ガリュードの気合いと共に放たれる剛剣。
次の瞬間、両機の剣同士が激突し、大気が衝撃に震えた。
「……っ!!」
まともに受け止める形となったバーウェルの細身剣が軋む。
普通なら瞬時に折れる(というより砕ける)ほどの一撃に、幾多の修羅場をくぐってきた剣も悲鳴を上げているのだ。
「もらった……っ!!」
もう一押しで砕ける……軋みを増す剣を見ながら、ガリュードがそう確信した時だった。
剣同士が激突した部分がいきなり発光したかと思うと、砕けかかっていたバーウェルの剣の強度が急激に増した。
「何っ!?」
それどころか逆に、バーウェルに迫っていたドルファーの剣が軋み、機体共々後方へと押し戻される。

「いてて……手が痺れた……。あんなの受け止めるんじゃなかったぜ……」
ぶつぶつと呟きながら、続けて攻撃に転じるクルト。
急速に増幅されたプラーナが剣先に向かって一点集中されていく。
「今度はこっちの番だぜ、ガリュード君。何ならそっちも受け止めてみるかい?」
「来い……っ!!」
次の反撃を見越して防御体勢をとったガリュードに向かって、クルトの『針冥』が唸りを上げる。
超高速の突きがドルファーに迫った瞬間……。
「ガリュードくん!!避けてっ!!!」
「えっ!?」
突如として聞きなれた大声が通信に入ってきた。
切羽詰ったその声に思わずガリュードが操縦桿を強く引く。
「ぐっ!!」
その直後、操縦席を強烈な衝撃が襲った。
バーウェルの剣がドルファーの左肩の辺りをかすめ、装甲を数枚まとめて削り取ったのだ。
モニター越しにその部分を見て、ガリュードの頬に冷や汗がつたう。
もし今の声が無かったら、防御もろとも貫かれていたのは間違いなかった。

「ちょっと!!大丈夫、ガリュードくん!?」
「………あ、エオリアさん……!?」
再び聞こえてきた大声に、ガリュードが慌てて我に帰る。
そこへ更に音量を増した大声が通信機を震わせた。
「『エオリアさん?』じゃないわよ、もう!!クルトくんの『針冥』を正面から受け止めようとするなんて、何考えてるのよ~~!?」
「す、すいません」
いつの間にかドルファーの横で剣を構えているガーネティアで、怒りと安堵の混じった声でエオリアが怒鳴る。
そのあまりの迫力に反射的に謝ってしまったガリュードだが、すぐに意識をクルトに移し態勢を整える。
「……エオリアさん、今の技、『針冥』って言うんですか?」
「そ。剣先にプラーナを一点集中させた、防御不可能な突き……プラーナ・コントロールに優れたクルトくんならではの技よ」
今度はいつもどおりの声で応えてくるエオリア。
思いきり怒鳴った事で、とりあえず気がすんだらしい。
「プラーナ・コントロール……ですか。なるほど、そうか……それでさっきも……」
その言葉にガリュードは、改めて『三強』の実力を垣間見た気がした。
さっきの激突でバーウェルの剣が折れなかったのも、接点にプラーナを集中して強度を上げたせいなのだ。
これほど自由にプラーナをコントロールできる騎士は、大陸全体でもそうはいないだろう。
そして三強と言うからには、同等の実力者があと2人は確実にいる事になる。

「まあ今回のお礼は後でゆっくり考えるとして……まずはそこのクルトくんを倒さないとね。……さっき弾き飛ばされたお返しもしたいし」
と、そんなガリュードの内心を知ってか知らずか、エオリアが軽い口調で話しかけてくる。
「了解……できればケーキ程度にしておいてくださいよ」
苦笑しながらも、同じく軽口で応えるガリュード。
まずは目の前の敵に集中する事。
この場にいない強敵の事を考えても、現在は無意味なのだから。
そう結論を出すと、エオリアに続くように愛機を一歩前に進めるガリュードだった。

「……参ったね、こりゃ。エオリアさんまで来られちゃ、さすがに俺1人じゃしんどいかな……」
前方で剣を構える漆黒と真紅の両機に、クルトが面倒そうにため息をつく。
先程エオリアを倒しそこなった事といい、今また彼女のせいでガリュードを倒しそこねた事といい、どうにも今日はとことんツイてないらしい。
おまけに周囲の戦況を見ると、自軍の装兵機部隊はヨークの騎士達によってかなりの後退を強いられている。
「あいつらも苦戦してるし、今回はここまでかな……」
もう一歩で総崩れになりかける自軍の姿に、クルトは撤退の意志を固めた。
素早く信号弾を打ち上げ、全軍に撤退命令を伝える。
「ちょっと、クルトくん!!勝ち逃げするつもりじゃないでしょうね~~!?」
「は?別に勝ったなんて思ってないって。どう見ても全体的にはうちの負けだよ」
「全体ではそうでも、私の気がすまないの~~!!」
「エオリアさんとそこのガリュード君を同時に相手にして勝てる……なんて思うほど自惚れてないよ、俺は。んじゃ、そういう事で」
不満気に騒ぐエオリアにそう告げると、クルトは最高速度でバーウェルを後退させる。
エオリアが更に呼び止める間もないほど素早く、そして完璧な撤退だった。

「うう~~!!次に会ったら絶っっ対に叩きのめしてやるからね~~!!」
「ま、まあまあ……エオリアさん……。こっちもフランさん達と合流して、全軍を引き揚げないと……」
そうなだめながら、大きく息をつくガリュード。
いろいろあったが、何とか地上戦は自軍の勝利で終わったのだ。
ざっと見ただけでも明らかに損害はジグリム軍の方が多く、緒戦としてはまず満足できる戦果と言えるだろう。
「あとは空の方か……。ロア提督、ミーナ……全員無事ですよね……」
そう小声で言うと、ガリュードは空を見上げた。
戦闘開始時点に広がっていた青空は、今では夕焼けへと変化を始めていた。


-続く-

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