猫々蹴球

ねこねこしゅーきゅー、と読むと大吉です。デレステブログになりつつありますが、アニメ感想と投稿SS、サッカーもありますヽ( ´▽`)ノ

十夜さんの投稿SS1

窓から差し込む朝日が、瞼を通して目に入ってくる。
 朝起きるのは、正直あまり得意な方ではない。低血圧と言う訳ではないので、さっさと起きなさい!などと姉によく言われるが身体は言う事を聞かない。意識が覚醒に向っているのを感じながらも、心地よいベッドの中でどうしようもなくまどろみを貪りたくなる。これは一日の始まりにしか許されない贅沢なのだから。
 しかし、それも束の間の事。
 勝手に意識は覚醒へと辿り着き、メイリン・ホークは目を覚ました。
「あれ、ここ……どこ?」
 思わず口から漏れる第一声。寝ぼけ半分の頭でも分かるほど、明らかに自室ではない。
 仰向けに寝ていたため、まず目に入ってくるのは部屋の天井…明らかに高さが違う。
 次に上半身を起こして視線は部屋の中へ…やっぱり違う。自分の部屋の内装じゃない。
 メイリンは姉と一緒の部屋で暮らしている。ホーク姉妹に限らず、この艦に乗務する者のほとんどが二人部屋だ。
部屋にあるのは簡素な備え付けのデスクとベッド。それが鏡あわせのように設置してあり、余ったスペースにクローゼットとシャワールームが申し訳ない程度に置かれている。食事は食堂で取るのでこれだけの物があれば何ら生活に困ることはない。いささか簡素過ぎる気もするが、この艦が戦艦である以上居住スペースとしては充分だ。
 しかし、目の前に広がる景色は見慣れたそれとは異なる。簡素な事に変わりはないが、もう少し精緻に色々な物が並んでいる。だからと言ってゴチャゴチャしている訳ではない。部屋の主の性格もあるだろうが、スッキリとした印象を受けた。
「…士官室?」
 当然、この艦にも士官が乗艦しており、そういった士官たちには一般兵とは異なって個室が与えられている。ここもそんな一室なのだろう。
 以前に副長のアーサーの私室へ書類を届けたことがあったが、その時は自分の部屋よりも狭いような印象を受けた。…やはり、部屋の主の性格によるらしい。
 でも、何で私こんなトコにいるんだろう…?
 そんな疑問がようやく浮かんで来た時、すぐ隣で「んんっ」という声と寝返りを打つ音が聞こえた。
どうやら部屋の主と思しき人物がすぐ隣で眠っていたらしい。…今まで全然気付かなかった。
 誰だろう?と大して考えずに視線をそちらに向けると―――
「!?」
 声をあげなかった自分を褒めたかった。もし、隣で眠っていたのがアーサーとかだったら、迷わず声をあげていただろう(失礼)一瞬で目が覚めた。それと同時に昨日の夜の記憶が段々と戻ってくる。
 その人物はこちらに背中を向けて眠っているので顔を見ることは出来ない。でも、誰なのかは分かる。白いシーツの海に横たわる少し長めの髪。そして――その髪は夜色に濃い青を混ぜたような深みのある紺色…。
「…アスランさん」
 知らずに呟いていた。愛しいその人の名を。
 
アスラン・ザラ。国防委員会直属特務隊『FAITH』所属。ザフト切ってのトップエリートであり、直属ではないが自分の上官にあたる。通信管制担当のオペレーターに過ぎない自分なんかにとっては、天と地ほどの差がある人だった。
 でも、今は違う。
 階級の差こそあれ、心の距離は縮まっていると胸を張って言える。
 だって――この人は、私を必要としてくれたから。
 もちろん、今までにだって恋をしたことはある。片想い。少し離れた所からその人をじっと見つめるだけの一方通行の恋愛。今までならそれでよかった。
 でも、今回は違った。自分の気持ちを伝えたかった。
 答えなんていらないと思った。気持ちを伝えられるだけでよかった。それでもこの人は答えをくれた。そして、言ってくれた。
「俺の側にいて欲しい」と。
 嬉しかった。ただ、ひたすらに嬉しかった。メイリン・ホークという人間が、アスラン・ザラに必要とされている…その事実だけが。
 胸にこみ上げてくるこの暖かい気持ちは何? 慈しみ? 思いやり? ううん、違う。これが――恋。許された者だけに与えられる贅沢な気持ち。
 決めた、もう迷わない。私はこの人に全身全霊で恋をする。だって、そうじゃないと絶対後悔しそうだから…。
「お姉ちゃんにも艦長にも、絶対何も言わせないんだから」
 愛しい人の寝顔を見ながら、メイリンは一人強く心に決めた。いつの間にかアスランの顔はメイリンの方を向いている。
 メイリン・ホーク16歳。ザフト軍戦艦『ミネルバ』所属・通信管制担当オペレーター。初めて恋人のベッドで迎えた朝は、強い決意とともに訪れた。


『Girl‘s an oath ~少女の誓い~』


「アスランさん、アスランさん。起きて下さい、朝ですよー」
 しばらくアスランの寝顔をほけーっと眺めていたメイリンだったが、適当なところで起こす事にした。名残惜しい、実に名残惜しい…が、交代の時間は刻々と迫ってきている。自分はともかくとして、アスランを遅れさせる訳にはいかない。もし、そんな事で嫌われでもしたら…。
 耳元にそっと唇を寄せ、優しく囁く。それだけで「んんー」っと言う返事が返って来た。さすがは現役パイロット。寝起きは悪くないらしい。
 形のいい睫毛が震え、瞼が開いていく。そして――綺麗な翡翠色をした瞳が現れた。まだ、焦点が合っていないのかボーッとした感じでこちらの顔をじっと見つめている。その瞳の中に自分の顔が映っていることが、メイリンには何だか嬉しかった。
 やがて、意識が覚醒してきたのか焦点が合い始め、こちらの顔を認めたアスランが「メイ…リン…?」と小さく呟いた。
「おはようございます、アスランさん」
「……………………」
「……………………」
「………………」
「………………」
「…………」
「…………」
「……」
「……」
「!?」
「?」
 数秒の後、
「うわッ!?」と声をあげてベッドの端まで飛び退くアスラン。つられてメイリンも「きゃッ!?」と小さく悲鳴をあげた。
 互いに身体をシーツでくるみ、ベッドの上で対峙する。その距離おおよそ1メートル強。
「な、えっ…め、メイリン!? な、何で…君が俺の部屋に!?」
 普段じゃ絶対に見られないアスランの顔。何かを背負っていて、少し冷めていて…そして、どこか陰があって。そんな(いい意味で)暗い感じのするアスランが、驚きの表情だけを顔全体に浮かべてメイリンの顔をじっと見ている。
 こんな顔、多分他の誰にも見せた事ないんじゃないかな? あくまで推測だけど。そう思わせるような表情が見られた事が何だか少し嬉しかった。
 でも、それと同時に少しだけ悲しくもある。だって、この反応じゃ――まるで、昨日の夜のこと何も覚えてないみたいなんだもの…。まさか、そんなことないよね?
 だから、確かめてみることにした。まずは。
 少しはにかんだ表情を作り、上目遣いで「おはようございます」と、小さめな声で言ってみる。
 結果――反応なし。相変わらず驚いた表情で固まっているアスラン。残念ではあるが、予想通りの結果なので、細かい事を考えず次へ。
 今度は一転。悲しみの表情で目を伏せがちにして「あの…覚えていません…か?」と。
 結果――面白いくらいの反応。表情を変えた時点で「あ、いや…その…」と途端に慌てふためき出し、言い終わる前には腕の中に抱かれていた。
「覚えている! も、もちろん、覚えている! ただ、ちょっと寝起きでボーッとしていて、反応出来なかっただけだから…その、…ゴメン。お、俺が悪かった」
 顔はアスランの胸に押し付けられているので表情を見ることは出来ない。でも、口調で、雰囲気で。驚いていたアスランがいつものアスランに戻った事が分かった。
 ああ、良かった。覚えていてくれたんだ。まさかこの人が忘れることはないだろうと思いつつも、確認してみて初めて安心している自分がいる。
 乙女心は複雑なのだ。
 だから、余計なことは言わずここは素直に折れる事にする。
「ふふっ、大丈夫ですよ。アスランさん。私も起きた時はビックリしちゃいましたから。でも、私はあんな風に声をあげて驚きはしませんでしたよ? アスランさんがあんまり驚くから私……」
 言い切る前に抱きしめ直され、優しく髪をなでられながら「悪かった…」と耳元でそっと囁かれた。
 ああ、アスランさん…。抱きしめ直され、自然とアスランの背中に回していた腕にも力が入る。
 ひとしきり、薄い衣越しに互いの体温を存分に感じあった後、どちらからともなく身体が離れていき…そして――

「…ンっ」

 くぐもった声とともに、再び距離がゼロになった。
 ただ、唇を合わせるだけの簡単なキス。その分、直に相手の体温とともに気持ちが感じられる。
 そうして互いの体温と気持ちを感じあった後、唇を離すと――優しげに見つめる綺麗な翡翠色をした瞳がそこにはあった。
「おはようございます、アスランさん」
「おはよう、メイリン」
今更ながらに朝の挨拶を交わす。どうしようもないくらいに穏やかな時間が二人を取り巻いていた。
昨日まで、こんな風になるなんて思ってもなかったのに…。
全ては昨日の夜、メイリンがアスランの部屋を訪れたところから始まった。

――昨夜――
気が付いたら、アスランの部屋の前にいた。
別に、何か話したかった訳じゃない。ただ、本当に――無意識で。
足は自然とこちらに向かい、気付くと各部屋備え付けのコールを押そうとしている自分がいた。
一瞬、押そうとする指が憚られる。だって、
何を話したらいいの?
この部屋の中にいるのはアスラン・ザラ。軍のトップエリートで自分の上官でよく他のパイロット(主にシン)ともぶつかっていていつも何かを悩んでいて…。
ううん、違う。そんなこと。
私は知っている。だって、いつも見ていたから。この人が――
もの凄く、もの凄く辛い表情をしていることを。
だから私は…。その辛さを、少しでも軽くしてあげたかった。
躊躇いながらも控えめに、短くコールを押す。ほどなくして開いたドアから覗いたアスランの顔は僅かばかりの驚きの表情が浮かんでいた。
「…メイリン?」
「は、はい。……あの…」
 上手く出てこない、言葉が。
「…………」もどかしく、どこか居心地の悪い沈黙が二人を包む。
その様子から、自分に何かを話に来たことを悟ったのだろう。アスランは少しだけ困ったような顔をして、メイリンを部屋の中へ招き入れた。「こんな所じゃ何だし、取り敢えず中へ…」
メイリンにデスクの椅子に座るように指し示しながら、アスランもベッドへと座る。
「…で、一体どうしたって言うんだ? 君が俺の部屋に来るなんて珍しいじゃないか…ルナマリアのことで俺に何か相談か?」
 アスランの口から出て来たのは姉の名前だった。メイリンの姉、ルナマリア・ホークはMS隊のパイロットであり、アスランの直属の部下にあたる。
 持ち出された話題は至極当然のものだった。MS管制担当のオペレーターとMS隊の指揮官、共通するのはメイリンの『姉』でありアスランの『部下』である『ルナマリア』という存在。傍から見ればそうだった――傍から見れば。
 だが、当事者であるメイリンは違った。例え、アスランがそうであったとしても、メイリンは違っていた。
 彼女の瞳には姉(ルナマリア)を通した指揮官(アスラン)など映ってはいない。映っているのはただ一人、アスラン・ザラという一人の人間(ヒト)だけ。
 だから言う。今、この場で。想いが後悔に変わってしまわないうちに。
「いえ、お姉ちゃんのことじゃないんです。…その、アスランさんの…事…で……」
「俺の……事…?」
 全く予想外のことだったのだろう。端正な顔が意外と言わんばかりの表情に変わる。
「その…アスランさん、…このところ……ずっと辛そうな顔…していたから…」
「心配で」と、最後まで言葉を続けることは出来なかった。途中で顔は俯き、声は段々と小さくなっていってしまう。
「………………」アスランは何も言わなかった。
 ただ、一瞬だけ、――切なそうな表情になったがすぐにいつもの表情に戻し、そして自嘲的に「そうか…」と小さく呟く。
「やっぱりだめだなぁ、俺は。オペレーターの君にまでそんな風に心配させてしまうなんて…」
 その言葉はメイリンにはとても痛かった。自分がただのオペレーターとしてしか見られていないことを改めて思い知らされる。
 叫んだのはほとんど同時で、反射だった。
「違う、…違うんです! …私……。私は…」
 気持ちが先走り、言葉が追いついて来ない。それでも一度堰を切って溢れ出した想いはとどまるところを知らなかった。
 言葉を探し必死に紡ぐ。この想いを、伝えるために。
「私、オペレーターですけど…それだけじゃなくて……。その、…心配なんです、アスランさんのことが。…一人の……女の子として…。だから…」
 何これ、意味分からない。自分が言った言葉なのに。
途中から声にならなくなっていた。どうしようもなく溢れてくる涙が、声とともにアスランの姿をも滲ませる。
 涙のせいでアスランの姿がはっきりと見えない。でも、その雰囲気が今までとは違ってひどく優しげなものに変わっているのが感じて取れた。
 スッと、目元に指が触れる感触がして視界がクリアになる。涙が指で拭われたと頭が理解した頃には、メイリンの顔は何か暖かいものに押し付けられていた。
 え、何…これ……。
 すぐ側に感じる鼓動と吐息。気付けばアスランに抱きしめられていた。
見かけほど華奢ではない腕が心地よく感じるくらいの力加減で、メイリンの細い身体を包んでいる。
そして――小さな声で、「ありがとう…」とアスランが囁いた。

窓から差し込んでくる朝日が眩しかった。
何をする訳でもない。ただ二人、シーツにくるまって、緩やかに流れる朝の一時を互いの存在を感じ合いながら過ごしている。今、メイリンは後ろからアスランに抱きしめられる形となっていた。
「ねぇ、アスランさん…」
 不意にメイリンが前を向いたまま問いかける。
「…アスランさんは、…今日も帰ってきて…くれますよね……?」
「………………」
 アスランは答えない。メイリンも知っている、アスランが答えることが出来ない理由を。
 理由は簡単、日常の世界にいないからだ。アスランとメイリンが今いるのは――『戦場』理不尽な事がそこかしこにある非日常の世界。
 もちろんメイリンはアスランのパイロットとしての腕は知っているし、信じてもいる。アスランが撃墜されることなどない、と。しかし、どの世界でもそうであるようにここ戦場にも『絶対』は存在しない。そして『絶対』が存在しない代わりに、今いる場所は他のどの世界よりも死がすぐ間近にあった。
 なんて理不尽な世界なんだろう。つくづくそう思う。――普通に恋も出来ないなんて。
 だから決めた。私は、この一瞬にも全身全霊で恋をする。
 今日も戦闘が始まればアスランは出撃するだろう。搭乗機である真紅のMS、メイリンには艦橋でその姿を画面越しに見つめることしか出来ない。オペレーターとしての仕事をこなしながら愛しい人の無事を信じて。
 でも、それで充分だ。気持ちは伝えた、答えももらった。あとは――
 後悔しないようにするだけ。
「俺が……」
 アスランが口を開いた。それと同時にメイリンを抱きしめる腕にも少し力が篭る。
「…俺が、この艦と君を守る。だから、…信じて待っていて欲しい……。俺の側に、いて欲しい…」
 何も言えなかった、言葉にならなかった。ただただ、嬉しくて…。分かった、と言えない代わりにアスランの胸に背中を預けるようにもたれかかる。すると、さらにギュッと腕が抱きしめてきた。
 幸せを噛みしめる。今、この瞬間だけは――非日常の中で。
 
今、アスランに、辛そうな表情は浮かんでいなかった。

                                                                   Fin



あとがき

初めて書いたアスラン×メイリンSSです。
…うっわ、ビミョー。何だコレ?
大部分のラブラブと若干のシリアス。
書いた本人が言うのもなんですが、かなり当初と違うラストになっています(苦笑)
でもまぁ…ソコソコ気に入っているのもまた事実。
形的にメイリンの気持ちを主体にしていますので、アスランの出番が若干(と言うかかなり)少なくなってしまいました。
キャラの性格違う!!とか、言わないで下さいね。
自分なりにあの二人が一緒に朝を迎えたらどうなるか…書いてみたらこうなりました。

それでもまぁ…

この二人のこんなシーンが見てみたい!!とか、思ってくださる方に読んでもらう事が出来ましたら幸いです。

 SS(投稿作品)管理用1

1 Comments

才条 蓮  

ほのぼのアスメイ~のSS。

 十夜さん読ませていただきました。
 とってもとってもほのぼのした作品だと思いました。特にはじめの方はそんな感じがしますね。私はほのぼのしたSSを書くのが中々苦手な方でして……。そういうのを書ける人はすごいなと思います。
 アスランメイリンはここでは結構かかれてますよね……って私が書いているのか。あらあら。ちなみに私もアスメイ派なのでこういうSSは嬉しいですね。ほのぼの~と戦場という殺伐としたものの対比が良いですね。

 あ、ここでSS書かせていただいている才条 蓮です。主には種デスを書いてます。他のも書きたいのですがね。

それでは、次回作考えているのであれば、楽しみにしています。
私の作品がたくさんあってごちゃごちゃしてますね……。私の作品いくつか消して整頓した方がいいかもしれませんね…。。

2005/11/25 (Fri) 12:36 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment

Designed by Akira.

Copyright © 猫々蹴球 All Rights Reserved.