猫々蹴球

ねこねこしゅーきゅー、と読むと大吉です。デレステブログになりつつありますが、アニメ感想と投稿SS、サッカーもありますヽ( ´▽`)ノ

蓮の花さんの投稿SS20

『機動戦士ガンダムSEED DESTINY―――“Phantom pain”』

《Phase:04 ~異端者達の横顔~》



 スウェン・カル・バヤン中尉以下、3名がフェン達の許へ駆けつける事ができたのは、彼女らの危機を察知したからではない。
 基地の制空圏内外で目撃されたのがザフト軍の量産型MS“ジン”と偵察用に改造したタイプだと判明し、その所在と撃破(可能ならば捕獲)を行っていたからである。
 フェン達が遭遇した部隊はそのジンの迎え部隊だったようだが、偵察用のジンは既にノワールによって撃墜されていた。ジン自体が武装し、抵抗してきたためだという。
「そんなわけで、これで終わりかと思ったら、多数の機影があったんだ。行ってみたらイーフウ少尉殿が大活躍の真っ最中だったというわけさ」
 シャムス・コーザ中尉がそう締め括ると、彼の周囲で話を聞いていた士官達が興味と、軽い笑い声を交えてカウンター席のフェン・イーフウ少尉に視線を集中させた。
 ミューディーに基地内の士官クラブへ誘われたフェンだったが、どことなく居心地の悪さを覚える。
「そんなに見ると、見物料取るよ?」
 隣席のミューディーのひと声で視線の鎖が外され、フェンはようやく解放された気分になった。
 ちなみに下士官のルミラスはここには入れず、それがフェンに落ち着きを失くさせている原因の1つにもなっている。
(考えてみれば、この基地に来てからずっとあの娘が付きっきりだったっけ)
 生真面目なルミラスは色々と教えてくれたが、時折、説明が熱心過ぎてついていけない時もあったが、慣れない環境に置かれたフェンにとって、大いに助けになった事は間違いない。そんな彼女にとって、ルミラスがいない状態でファントムペインの面々と同じ空間にいるというのは初めての体験だ。
「どうしたの? 何か考え事?」
 グラスに注がれたアップルジュース――アルコールを勧められたが、気分ではなかった――の水面をじっと見ていたフェンを、横目で見ながらミューディー。
「やっぱりお酒にする?」
 そう言って自分のグラスを掲げてみせるミューディーを見て、フェンは断りつつ、ふと思いついた事を尋ねてみた。
「ルミラスって、普段どんな娘なのかな?」
「どうしたの? 突然」
「いや、何となく。一緒にいる事は多いんだけど、あの娘、真面目過ぎるっていうか」
「そうよ。ルミィは真面目な子。でもね……」
 1拍置いてグラスを傾け、続ける。
「空回りが多いのよ。今日の戦闘だってそうでしょ? ここでの実力なんて下から数えた方が早いのに、無理して戦おうとして」
「……そうだったんだ」
「背伸びし過ぎなのよ。だから子供なんだって言うとムキになるしね」
「そこは同感」
 何となく、母親同士が子育てに関する愚痴を言い合っているような気分を味わいながら、フェンは思い出す。
 あの時――敵の哨戒部隊を遭遇した際――ルミラスが困難な状況に関わらず戦おうと言ったのは、ミューディーやシャムスへの対抗意識もあったのかもしれない。
「もっと肩の力抜けばいいのに、コーディネーターの脅威から人々を守るんだって」
 含み笑いを浮かべ、ミューディーは肩をすくめる。
「健気なのはいいけどさ。それをこっちにまで押し付けるのは止めてほしいわね」
 派手なメイクと改造軍服の事を言っているのだろうか。
 しかし、とフェンはミューディーの服装を観察する。
 上半身の制服は肩と胸部を覆っているだけ。極端に丈の短いスカート。チョーカー。真珠付きの大きなピアス。
 別にルミラスでなくても、真面目に勤務している軍人からすれば、あまり良い感情は抱かないだろう。ファントムペインであればこそ許された環境と言える。
 何であんな人達に最新鋭MSが与えられたのか理解出来ないとルミラスが言っていた。単に腕の差だろうと思うが、本人の前では言わない。
「フェンもやってみる? オススメの香水があるんだけど」
「結構です」
 いつの間にかファーストネームで呼んでいるミューディーがそんな勧誘をしてきたので即答する。淡白な口調で拒否したものの、あまり悪い気分ではない。
(認めてもらったって事かな?)
 アップルジュースを口に含む。アルコールならば周囲と一緒に盛り上がる事もできたのだろうが、個人的に嫌な思い出があるので、今回は遠慮した。
「そっか。気が変わったらいつでも言ってね」
 それにしても、とミューディーはテーブルの上に肘を置いて両手の指を絡ませ、話題を変えた。
「あなたみたいなのが、よく少尉留まりでいられたものね」
「そう?」
「最初からうちに来てれば、もう大尉は固いんじゃない? そうすれば、あのスウェンにだって命令できたのに」
「あたしには無理だよ。人に指示出すのって苦手だし」
 寡黙なノワールのパイロットを思い出し、グラスを運ぶ手を止めた。
 背後の歓声に振り向くと、ビリヤード台に群がっていた士官達の中で、シャムスがガッツポーズをとっている。
 ミューディーといいシャムスといい、第1印象は最悪だった。
(でも、結構良いとこあるんだね)
 彼らがゲームに興じている、その更に向こう側。
 壁に埋め込まれているTVモニターでは、紛争の原因となったユニウスセブンの事件に関して、偉そうな肩書きを持ったコメンテーター達が自分勝手な意見を持ち出して、平行線になる事を前提とした討論を行っている。
 今の話題は、ユニウスセブンの破片落下事件を引き起こしたコーディネーターのテロリストについてだった。
 実行犯は武装し、破片落下と共に自爆して全滅したのだという。
 だが、そもそもこの事件を仕組んだのは何者か。テロリスト達に兵器を与えたのは何者か。堂々巡りの議論だが、それなりに白熱している。
 頬杖をついて、ミューディーは派手なメイクで彩られた表情に冷笑を浮かべる。
「空の悪魔、コーディネーターが全部悪い。だから皆殺しにする。それでいいじゃない」
 彼女の言い様は、素っ気無いと表現するには酷過ぎた。あまりに極論過ぎて冗談かと思ったが、メイクの中に垣間見える表情にそんなものは無い。
「……それはちょっと言い過ぎじゃない?」
「そう?」
 自分は何もおかしな事は言っていないという顔をするミューディー。
 極論を、ここまで真剣に、尚且つはっきり言える人間もいないだろう。
(そういえばルミラスも……)
 ファントムペインの面々は、コーディネーターに対して並々ならぬ差別意識を持っているようだ。
 確かに、遺伝的に強化され、努力さえすればあらゆる分野でスペシャリストになれるコーディネーターという人々は、自分達のようなナチュラルにとっては理解不能な存在と言えるだろう。
(でも、だからって……)
 戦争をする以上、相手国の人間に親しみを感じろなどというのは無理だろうが、彼らをまるで異星人や怪物か何かのように見るファントムペインの考え方は理解できない。
「中には、善いコーディネーターの人だっているでしょ?」
 自分でも馬鹿らしくなる一般論だと思う。しかし、ミューディーは冷たく鼻を鳴らしただけだった。
「何よそれ? 善いコーディネーターなんて、死んだコーディネーターくらいなもんでしょう?」
  

  
 トイレに行くという口実で士官クラブから抜け出したのは、そこが異質な空間に思えたからだ。
 別に陰湿な空気など流れていない。
 シャムスのようにビリヤードを楽しんだり、ミューディーのように談笑したりと雰囲気は明るい。
 陽気なシャムスにせよ、飄々としたミューディーにせよ、彼らが悪い人間で無いのは分かる。だが、その内面にはフェンと決して交わる事の無い、冷たい川が流れているような感じがする。その川を作っているのは、コーディネーターへの差別意識だろうか。
 いずれにせよ、それがフェンと彼らを隔てている壁なのは間違いない。
「フェン、どうかしたんですか?」
 士官クラブに入れない下士官や兵士が寛いでいる待機室にやってくると、本を読んでいたルミラスが話しかけてきた。
「うん? 何でもないよ」
「何でもないという事はないでしょう。いかにも思い悩んでいる顔してますよ?」
 その事には答えず、フェンは胸中深くにわだかまっている疑問を口にしてみた。
「……ルミラスはさ。コーディネーターについてどう思ってる?」
「はぁ?」
 わけが分からないと、首を傾げるルミラスだが、少し考えた後、彼女らしい率直な意見を述べた。
「ナチュラルを脅かす空の悪魔……でしょうか。その脅威から人々を守るのが」
「……第81独立機動群の役目ってわけ?」
 苦笑いしながら、その先を言う。
 ルミラスの表情が固まる。
 子供らしい純粋さと差別意識が綯い交ぜになった使命感といったところか。
「……そうです。何か問題でも?」
 からかわれたと感じたのか、赤くなりながら不機嫌そうな上目遣いで睨んでくるルミラス。  
「あのねルミラス、そういう可愛い顔されると、余計に苛めたくなるから」
 益々ムキになるルミラス。少し下手に出て褒めたりするとすぐに機嫌を直すため、結構面白い。
(そういうところは子供なんだね)
 本人は自覚していないだろうが、そうした純粋さや率直さが、フェンには羨ましい。
「ねぇ、ルミラス。コーディネーターって、皆悪い人達ばかりだと思う?」
 話を突然変えられ、眉をしかめるルミラス。
「さっきから何が言いたいのですか? そんな事は当然でしょう。コーディネーターは……」
 それからいつも通り、生真面目な彼女らしい講義が始まった。
 コーディネーターは危険な存在であり、自分達はそれを排除するために選び抜かれた戦士なのだ。
 この基地にフェンがやってきて、ルミラスが付きっきりになってから耳にタコが出来るほど聞かされた話だ。
 その話をする時のルミラスがとても誇らしげで、迷いの無い姿勢が羨ましくて、不思議と同じ話を聞かされても不快ではなかった。そう、これまでは。
「弱きを守り、強きを挫く。私達はそうあらねばらないんです」
 ミューディーの話を聞いた後では、胸を張って語るルミラスの姿も、フェンの瞳には真っ直ぐな像として映らなかった。
 あるいは、ふと思いついた疑問をぶつけてみるべきなのだろうか。
 もしも、目の前で子供が傷付き倒れ、それがコーディネーターであったらどうするのか?
 果たしてこの純粋な金髪の少女は何と答えるだろう。
「騎士道精神っていうのかな? 立派だね。あたしには無理だよ……」
 しかし、口から出るのは違う言葉ばかり。
「そんな事はありません! フェンも立派な戦士になれる素質はあります!」
「そうなの?」
「当たり前です!」
 真剣な面持ちで詰め寄るルミラスに気圧され、フェンは少しばかり後ずさりした。
「今日の戦い……悔しいですけど、あなたがいなければ私も無事ではなかったでしょう。あなたの戦い方は粗雑で乱暴です。でも、MSをあそこまで操るなんて、普通はできない事です」
「まぁ、確かに前の部隊でも筋が良いとか言われたけど……それって褒めてる?」
「褒めてますよ! フェン、私もまだまだ至らぬ点はありますが、一緒にコーディネーターの脅威からナチュラルの人々を守りましょう」
 がしっと手を握ってくるルミラスの瞳には、ただただ純粋な光しかなかった。
「あ、あのねルミラス。他の人が見てるから……」
「あ……」
 その姿勢のまま固まる2人。
 どっと沸く周囲の人々。
 何故か、指笛を吹く兵士やヒューヒューとはやし立てる下士官。
「お熱いね、2人とも!」
「そういうのは2人きりの時にやってくれ。目に毒だ」
「くそぉ! 今日こそカーチェ曹長にコクろうと思ったのに! 彼女にそんな趣味が……」
 本気で悔しそうにしている輩までいる。泣いているのは芝居ではなく、本物の涙が見えた。
「ちょ! 誤解を招くような事言わないでよ!」
 慌ててそのようにまくし立てたのはフェンの方だった。ルミラスはというと、恥ずかしそうに俯いていたかと思うと、嵐のような勢いで待機室から飛び出して行った。頬が紅潮していたように見えたのは気のせいだろうか。
「ほら! あの子も困ってたじゃない!」
「何を言いますか少尉。あれは図星を刺された時の顔ですよ」
 フェンと歳がそれほど変わらない婦人下士官がそう言って、何故か目をキラリと光らせた。 
「あっそ! あなたの場合、少女マンガの読み過ぎでしょ」
「心配するな少尉。異性だろうと同性だろうと、人が人を想う心に嘘偽りは無い。温かく見守らせてもらおう」
「いや、意味分からないし……」
 士官クラブとは違う意味で、独特の雰囲気に染まっている待機室。
 どうしてファントムペインというのは、こうも偏った人間が多いのだと、精神的な疲労を感じながらフェンは思った。
  
 
  
「それはそれは……災難だったわねぇ」
 クラブに戻ったフェンが、事の顛末をミューディーに話したところ、返ってきたのがその言葉だった。
 フェンの前にはアップルジュースではなく、ウィスキーが置かれている。さっきの出来事を思い出したら腹立たしくなったので、アルコールで気を紛らわせる事にした。
「まぁ、確かにルミィがあんな風に他人に懐くなんて珍しいし、そう考える連中もいるかもね」
「珍しい?」
「そうよ」
 両手の平を上に向け、肩をすくめるミューディー。
「さっきも言ったけど、あの娘って大真面目でしょ? 多分、あたし達みたいな空気の人間が好きじゃないのね」
 基地にやってきたばかりの頃は、任務以外はほとんど自室に篭っていたのだという。
「そうだったの?」
「今でこそ、多少マシになったけどね。それでも、あなたが来る前に比べると、まだ引き篭もりがちだったのよ」
 フェンが来てから、彼女の変化が劇的になった。
 任務以外でも出歩き、これまでは避けていた人間達とも少しずつ会話などをするようになってきたのである。
「さっき言ってた、ルミィが待機室で本を読んでたって話だけど、それだって最近になってからよ」
 良い傾向なのだろうと、ミューディーはグラスを傾ける。それに倣ってフェンもウィスキーを口に流し込んだ。久しぶりのアルコールは、強い香りや熱と共に喉を通り過ぎて行く。
「やっぱ、フェンのおかげかもね。あの子も、ようやく歳相応の可愛げを見せるようになったわ」
 冗談めかして意地の悪い笑みを浮かべるミューディーに苦笑しつつ、フェンは手元のアルコール飲料の水面に視線を落とす。ミューディーの言った“歳相応”という単語が胸に引っ掛かった。
「ちょっと気になったんだけど……」
「何が?」
 改まった口調のフェンに、ミューディーはグラスを置いた。表面の水滴が滑り落ち、テーブルに透明な円を描く。
「ここの兵士って、どうして若い子ばっかりなの?」
「選り取りみどりでパラダイス?」
「……真面目に聞いてるんだけど」
「冗談よ。ルミィの言い方を借りると“選ばれた戦士”だからかしらね」
 ミューディーのような人間が言うと妙な違和感がある単語だとフェンは思った。
「あたし達もルミィも、ここの連中が全部ってわけじゃないけど、色々と理由有りで1人になった子供がある施設に集められてね」
 そこで訓練を受けた人間が多いのだという。
「……訓練?」
「そうよ。コーディネーター連中を皆殺しにするための訓練。あたしも、あの娘もやったのよ」
 泥沼の中を這い回り、暗闇の中で照明弾を頼りに的を撃ち抜き、目隠しをした状態でライフルの分解と組み立てを行い、そして――。
「ビデオ……?」
 ミューディーの口から出た訓練項目に、フェンは眉をひそめる。
「コーディネーターがナチュラルを虐殺してるビデオよ。ホント、連中って怖いわね」
 笑いながら言っているが、派手なメイクに彩られている瞳に笑みは無かった。
 ファントムペイン全体に浸透している、コーディネーターに対する敵対意識の理由。
(それって……)
 フェンの目には、編集されたVTRを繰り返し観せられる無数の子供達の姿が浮かんだ。
 ひと昔前の洗脳宗教を思い出し、逆流しそうな胃の中のアルコールを、フェンは懸命に堪える。
「実はね。ルミィはああ見えて、成績が悪かったのよ。VTR鑑賞の時だって……」
 人が惨殺されている映像を見てその場に嘔吐し、教官に懲罰を喰らっていたという。
「……そうなんだ」
「そうなのよ。未だに進歩してないんだから……」
 呆れるミューディーの傍らで、少しほっとしている自分に気付く。
 ルミラスはまともだったんだという安堵感。同時に、そういった思考をする自身への嫌悪感が混じり、アルコールと共に体を巡る。それを不愉快に思うフェンを他所に、ビリヤード台から再び歓声が上がった。
 
 
  
「ふぅ……」
 熱のこもった吐息が、夜の空気に溶けていく。
 外に出たフェンの体を冷気が包む。アルコールと一緒に不愉快さが抜けていく気がして、ふと肩の力が抜けた。
「……あ」
 歩を進めると、見覚えのある人影が立っていた。
 警備の兵士ではない。
 月の光を吸収したように輝く銀髪の持ち主は、ストライクノワールのパイロット、スウェン・カル・バヤン中尉に間違いなかった。
「……中尉?」
 フェンに気付いていないのか、こちらに背を向けたまま、スウェンは満点の星空を見上げていた。フェンもつられたように星の天蓋を仰ぐ。
 地上の人間共の争いなど何処吹く風と、星々はそれぞれ気の赴くままに輝きを放っている。
 無責任なまでに美しい星に腹立たしさを覚えたのは、酔いが回ったからだろうか。狙撃用のライフルでもあれば、あの星に住んでいる連中の頭を狙えるか。
(馬鹿馬鹿しい……飲み過ぎたかな)
 再び溜息をつくと、ようやく彼女の存在に気付いたようにスウェンが振り返った。
 銀髪の青年の瞳には冷たい光が宿っている。その空間の冷気を全て吸収したのか、あるいは瞳の冷たさが空気を凍てつかせたのか。    
 いずれにせよ、振り向いたスウェンから感じられるものは何も無い。元より感情の変化に乏しいのは最初に会った印象から変わらない。
 そのスウェンが、何故このような場所にいるのかは定かではない。
 だが、それを聞こうとする前にスウェンが歩き出し、フェンの脇を通り抜けて基地内へと戻っていった。一瞬、彼が少年のような純粋な瞳をしていたように見えたのは、果たして見間違いだろうか。
 呼び止めるのも後を追うのも変に思えて、フェンはその場に立ち尽す。
 外の冷気で、体よりもまず心が冷え始めた。
(コーディネーター皆殺しなんて……狂ってるよ。それとも、あたしが間違ってるのかなぁ)
 自分はやはりここでは異質なのだろう。今更のようだが、ミューディーの話を聞いて深く実感した。
 辞表を出しに行こうか、今からでも遅くはない。
 半ば本気でフェンが考えた時――。
「フェン、こんな所にいらしたのですか?」
 耳に馴染んだ声が、フェンを振り向かせた。
 月と星々の輝きを受け、彼女の金髪が独特の光を放つ。
 軍服などという無粋なものではなく、綺麗なドレスでも着ていれば良かったのに――そう思わずにはいられないフェンだった。
「ルミラス……」
「さっきはすみませんでした。私のせいでフェンに恥をかかせてしまったのに、突然出て行ってしまって……」
 バツが悪そうにルミラスは頭を下げる。
「ああ、わざわざそれを言うために? いいよ。あたしは気にしてないし」
「そう……ですか? 今、うんざりしたような顔をしていたように思えますが……」
「あれ、そう見えた……?」
 そういうところを見つけるのと、はっきり口にするところは子供らしいと思った。
「違うのですか?」
「違わないけど……ルミラスに対してじゃないよ。他の連中、どうしてああいう勘違いができるのか理解できないって思ってたなんだよ」
「勘違い……ですか」
 そこでルミラスは目を伏せた。何故そんな顔をするのか、フェンには分からない。
「ところで、何をしていたのですか?」
 問われて、フェンはきょとんとする。酔いは既に醒めているはずだが、考え事をしていたらいつの間にか時間が経っていたようだ。
「うん? まぁ、そうね。星が綺麗だったから、ちょっとねぇ」
 別に誤魔化す事でもないだろうが、何となく闇と光点に満たされた天蓋を見上げる。
「星……?」 
 ルミラスも首を反らす。眼鏡のレンズに月の光が反射した。
 金髪の少女を一瞥し、フェンは視線を星空へ戻す。
「ねぇ、ルミラス……」
「はい?」
「軍人なんかしててさ。辛いって思った事無い?」
 ミューディーから聞いた話を思い出す。星々を眺めるあどけない姿は、軍服さえ着ていなければ歳相応の少女にしか見えない。
 こんな子がコーディネーター殲滅の過酷な訓練を受けたなどと、どうして信じられるだろう。
 フェンも入隊して訓練を受けていた頃は、過酷な毎日に吐き気を覚えたものだが、目の前の少女の訓練密度はそれを上回るのだという。
「いきなり何を言い出すんですか? 辛いなんて、そんな事思うわけないじゃないですよ」
 何の迷いもなくそう答えるルミラス。
「……そっか」
「変ですよ、フェンは」
 彼女にとって当然と思っている事に対し、疑問を投げかけるフェンは、変人にしか見えないのだろう。
「しっかりして下さい。フェンは私達と一緒にコーディネーターの脅威からナチュラルの人々を守るんですから」
 そう言って“選ばれた戦士”である金髪の少女は笑みを浮かべた。
 肩肘を張らない柔らかな微笑み。
 自分の事を信用し、心を許している表情だった。  
 いつもなら、可愛いなと口元がニヤけるところだが、この時のフェンは後ろめたい気持ちになっていた。
 不本意にこの基地に連れてこられてから、1番に仲良く慣れた少女なのに、彼女が信じている『コーディネーターの脅威からナチュラルを守る』思想に、一瞬でも嫌悪感を感じてしまったのである。
 ルミラスに対して初めて抱いた気持ちであり、フェンにはそれがショックだった。
「う、うん、そうね。しっかりしないと……」
 きごちないフェンの受け答えに、ルミラスは首を傾げた。




―――――to be continue

 SS(投稿作品) 管理用2

3 Comments

才条 蓮  

おひさです。

こんにちは…そしておひさしぶりです。
ここに感想を送るのも久しぶりですね。
…才条 蓮です。

蓮の花さんも相変わらず頑張っていらっしゃってすごいですね。
何がすごいかと言うと、ここまで安定して書いておられるのがすごいと思います。
…私は安定していないですからね。
描き始めると滅茶苦茶早いのですがね。
…まあ、ペースは人それぞれですね。

…何はともあれ、蓮の花さんが今でも書いておられるのは、私にとってすごい励みです。よ~し、私も少しは頑張って見ましょう。……たぶん。
ヒマがあったら、また見てやってください(その前に私が書かないと話しにならないですが)。


そして感想の前半戦。
さすが蓮の花さんですね。
プロ並みの第3者描写は相変わらずです。
今回はSSということで設定がしっかりしている分、その分背景描写や心理描写がしっかりしています。モビルスーツの行動の細かさと心理描写の繊細はすごいですねえ。

読ませていただいて思ったこと。
『すべての登場人物をヒトとして描写している』
このことに感動しました。
それぞれは非人道ではなく、よい一面も描写しているのでいいと思いました~~。

2007/10/16 (Tue) 22:11 | REPLY |   

蓮の花  

こちらこそ(^^)

>才条さん
 改めてお久しぶりです~。
 そして、感想ありがとうございます。
 
>背景描写や心理描写
 二次創作モノは設定の土台が出来ている分、他の面に労力をつぎ込めるのが良いですね。その分、作品の雰囲気を壊さないようにしないといけないですが(ーー;)

>すべての登場人物をヒトとして描写している

 いやはや、今の私には最高の褒め言葉で、逆に恐縮です(^^;)
 スターゲイザー本編を見ていて、ファントムペインの面々が結構人間臭い一面を持っているのだなと知り、このような形で作品に反映された次第です。
 個人的には『最初は嫌な役回りでも、後で“コイツ、結構いい所あるんだな”と思える』というキャラが好きだったりするので(笑)

 何にせよ、才条さんもこちらに戻ってこられたので、また賑やかになりますね。改めてよろしくです(_ _ )

2007/10/26 (Fri) 03:03 | EDIT | REPLY |   

玉井よしあき  

Phase:04感想

今回はファントムペインの背景描写や心理描写に注がれています。
スターゲイザー本編を見ても一応人間臭いところをみせているつもりでしょうが、私にとっては役割に沿った記号にしか思えませんでしたがこの話ではより人間に近かったです。
やはり人物描写もしたければ総合一時間ではむりです。

フェンが来てから、ルミラスの変化が劇的になったのは意外でした。

一瞬、スウェンが少年のような純粋な瞳をしていたように見える描写は本編でも見たかった。

>「くそぉ! 今日こそカーチェ曹長にコクろうと思ったのに! 彼女にそんな趣味が……」
>本気で悔しそうにしている輩までいる。泣いているのは芝居ではなく、本物の涙が見えた。

ルミラスやフェンはそれで良いですが、私が考えた話はそれ所じゃすみません。
それについていずれSSとして書きます。

> ……“ヴぇが”に”あるたいる”の緑の人?( ̄ー ̄; )

それはどうでしょう。
電王が終わっても使用し続けます。

>長く(くどく)なり過ぎないようにバランス調整をするのですが、これが中々……

難しいでせう。
私の場合は簡単すぎて説明にならないのが欠点です。

>今回の話でバビやディンが登場したのも、

私もジンやディン、バビを愛用しています。
特にバビのチャージ攻撃で強いモビルスーツを吹っ飛ばして勝利を締めくくったときは快感でスカッとします。

> 掲載された玉井さんのSS感想、もう少しお待ち下さいm(_ _;)m
  
了解です。
私のオリジナルキャラクターであるクウジとソロンの二人組もさぞお喜び(もしくは怒り)になるでしょう。

2008/01/09 (Wed) 11:05 | EDIT | REPLY |   

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