猫々蹴球

ねこねこしゅーきゅー、と読むと大吉です。デレステブログになりつつありますが、アニメ感想と投稿SS、サッカーもありますヽ( ´▽`)ノ

聖夜のシンデレラ 第二章

「うわあ……お兄ちゃん、早く行こっ!!」
クリスマスムード一色に染まった街並みを見て、メルヴィがトウヤを急かす。
「ふふ……そんなに急いで、また迷子になっても知らないぞ?」
「えー、メルヴィだっていつも迷子になるわけじゃないもん」
少しだけ拗ねたような表情をするメルヴィ。
そんな表情も可愛くて、ついつい意地悪をしてしまうトウヤだった。
「ふ~ん、学校に通ってた頃、毎日家まで友達に送ってもらってたのは誰だっけ?」
「う……あ、あれは……。もう……お兄ちゃんのイジワル……」
困ったように言うと、ぷいっと横を向いてしまう。
だが、どこか嬉しそうな雰囲気があり、本気で拗ねているわけじゃ無いのがはっきりわかる。
トウヤもメルヴィも、こんなささやかな会話が楽しくてしょうがなかったのだ。

「ははっ、だからさ………ほら」
優しく笑い、トウヤがメルヴィの手をそっと握る。
「あっ……お兄ちゃん……」
一瞬だけ驚いたようなメルヴィの顔が、すぐに笑顔に変わる。
握り返してくる小さな手の温もりが、トウヤにはすごく懐かしいものに思える。
「さ、いこうぜ。せっかくのクリスマスだ、思いっきり楽しまなきゃな!!」
「うん!!」
お互い笑顔で頷くと、トウヤとメルヴィはイルミネーションで彩られた街に入っていく。
大きな喜びと、ほんの少しの寂しさを感じながら……。

喜びと寂しさの原因は、今から数時間前にあった。
メルヴィとの再会。
別れと同様、いやそれ以上に突然の再会は、彼女の家族達の考えによるものだった。
『向こうの世界での12月24日、聖夜の時だけでもメルヴィをトウヤに会わせてあげてほしい』
クラシオ家を代表したユミールが、その願いを聖地に嘆願したのだ。
もちろん最初は認められるはずも無かった。
召喚禁止が定まってから、まだ数ヶ月しか経っていないのだから。
それでもトウヤとメルヴィの功績、ユミールとフォルゼンの説得……。
そして教母であるイヴェルの力添えによって、ようやく許可が下りたのだった。

「メルヴィ、お姉ちゃん達がそんな事してくれてたなんて、ちっとも知らなかった……」
風見家の居間でメルヴィはそう言った。
「今日の朝、『私達からのクリスマスプレゼントよ』って言われて……それで……」
話してるうちにメルヴィの瞳に涙が滲んできている。
トウヤもヤマトも一言も無く、ただメルヴィの話を聞き続けた。
「ちょっとの時間でもお兄ちゃんに会えるって思ったら、嬉しくて……涙が出てきちゃって……」
そこまで話した所で泣き出したメルヴィ……その髪をトウヤは優しく撫でてやる。
それ以上は聞かなくてもわかった。
きっとユミールもこうしてメルヴィの髪を優しく撫でてやったのだろう。
『ありがとう……』
トウヤは心の中でユミール達の優しさに感謝し、同時に決意する。
彼女達の心に応えなければいけない。
メルヴィに楽しいクリスマスの思い出を作ってあげなくてはいけない。
メルヴィのために、俺自身のために。
たとえ……この奇跡が今夜だけのものであったとしても……。

そして2人のクリスマスは始まった。

「ねえねえ、お兄ちゃん!! あれってなあに!?」
「ああ、あれはサンタクロースって言って……」
「あっ!! あれが前に話してくれたサンタさんなんだ!!」
初めて見るサンタにメルヴィがはしゃいだり……。

「美味いか、メルヴィ?」
「うん!! このケーキ、すっごくおいしい!!」
「パルディアさんのとどっちが美味しい?」
「もちろんママの!!」
ケーキについて、そんな話で笑いあったり……。

「雪、降らないかなあ……」
「どうだろうな……でも、降ると寒いぜ」
「あはは、お兄ちゃんらしいね」
などと、気をつかって留守番を申し出たヤマトが聞いたら、『気が利かニャい』と呆れそうな事を言ったり……。

そんな温かな時間を過ごしながら、トウヤとメルヴィはクリスマスパレードに賑わう街を歩いていく。
楽しい時間だった。
久しぶりに心から楽しいと思える時間だった。
こんな時間がずっと続いてほしい――トウヤは本当にそう思っていた。
だが……当然時間は止まらずに過ぎていく。
24日が終わりに近づくにつれて、喜びを寂しさが上まわっていく。
『メルヴィ……』
トウヤは無言でメルヴィの手を握る力を少しだけ強めた。
そうする事で別れの時を遅らせる事ができると信じるように。
「お兄ちゃん……」
きっとメルヴィも同じ気持ちだったのだろう……ぎゅっとトウヤの手を握り返してくる。
そのまま2人は歩き出す。
最後に見ようと決めていたクリスマスツリーのある公園を目指して……。
 
 
最終章へ続く。

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