猫々蹴球

ねこねこしゅーきゅー、と読むと大吉です。デレステブログになりつつありますが、アニメ感想と投稿SS、サッカーもありますヽ( ´▽`)ノ

アカデミー・ライフ 第12話

『アカデミー・ライフ』

第12話 34 years ago -提督-



「むむ、これはどこの部分だ……? 甲板じゃなさそうだが………」

フラムエルク。
同名の城がそびえ立つヨークの王都。
その一室から、何やらぶつぶつと声が聞こえてくる。

「ん? どうも違うな……ここはやっぱり……」
そんな事を呟きながら、細かい部品を一つ一つ組み合わせていく声の主。
やや茶色がかった黒髪をしたその男は、どうやら帆船模型を作っているらしく、顔つきは真剣そのものだ。
「よしよしうまくいった……次はこっちの部品を……」
男がそう再び呟いていると、廊下からカツカツと足音が近づいてくる。
そしてその直後、主の許可もなくドアがバタンと開かれた。
「おい、ロア!! いるんだろ!!……って、なんだまた模型作りかよ」
その声にロアと呼ばれた男がゆっくりと振り返る。
「なんだ、ガルナか……今いいとこなんだから、邪魔はするなよ」
それだけ言うと、再び模型と向き合うロア。
その様子にガルナはため息をつくと、そばのイスに腰掛ける。
「まったく……模型なんか作ってる場合じゃないだろうが。聞いたぜ、この前の会議で大臣方とやりあったらしいじゃないか」
「………うるさいな。プレーツやフランにも散々言われたんだから、ほっといてくれ」
模型を作りながら愚痴るロアだが、ふと手を止めると真剣な顔でガルナに向き直った。

「で、どうなった、出征軍は? 出発してもう3日になるが……」
「大臣の話では、順調に進軍中で2日後には敵と接触予定だとさ。 この城をほとんど空っぽにしてのんきなもんだぜ、あいつら」
そう言って肩をすくめるガルナ。
「ちょっと考えりゃ、今の状況がいかに危険かわかるはずなんだがな……くそっ、思い出すだけで気分が悪くなる」
思わず机をドンと叩くロア、その拍子に先ほど組み上げた帆船模型のマストがパタッと倒れる。
「あ」
ロアの顔が怒りから悲しみに瞬時に変化した。
続いてやり場の無い怒りがこみ上げ、それが大臣達の悪口として具体化するのに数秒とかからなかった。


南南西の国境付近に展開するジグリム軍に対しての先制攻撃、それが会議で決定したのはつい数日前の事であった。
その会議でロアは、「ジグリムの陽動作戦の可能性有り」と出陣の中止を訴えたが、結局大臣達に無視されてしまう。
しかも大臣達の主張は、
「これは我が国への挑戦であり、これに応えぬはヨークの騎士道に反する!!」
などといった精神論であり、呆れたロアは憤然としてその場を立ち去ってしまった。
その罰として、現在ロアは部屋で謹慎を命じられているという訳である。

「もしジグリムが本気で攻めてくるなら、わざわざあんな目立つように展開するはずがない、そうだろガルナ?」
「まったくだ、どうも大臣方は敵にまで騎士の精神を求めているらしい……敵さんのどこにそんな義理があるのやら」
「女王陛下がご病気だという事につけこんで、自分らの好きなように軍を動かしやがって……実際に戦う俺達の苦労も知らずによ」
なおも延々と大臣達の陰口をたたく2人……。

そのうちの1人、ロア・ジン・クランクハイト提督は現在38歳。
ヨークの飛行艦隊の副司令官であり、数々の戦いに参加、勝利してきた実績を持つ。
装兵機の操縦は出来ないが、艦隊司令官としては有能で部下からの信望も厚い。
ただ上官や大臣とよくもめる為、軍のお偉方からの目は厳しい。
模型作りが趣味という意外な一面もあり、いつか実物大の帆船模型を作るのが夢らしい。

そしてもう1人はガルナ・ジン・ノーマ、36歳。
ロアとは下士官時代からの戦友であり、現在は彼の部隊に所属している。
その剣の腕は高く、装兵機乗りとしても優秀……更に艦隊指揮の手腕も確かと、バランスの良さは軍でも随一。
ヨーク期待の若手騎士ガリュードの師匠としても有名である。
ただロアと同様に上とのトラブルが多く、あまり世渡りが上手いとは言い難い。

と、何かと問題児に見られがちな2人だが、何故か名コンビとして活躍している為、周りからは不思議がられているのだった。

「ところで出征軍の司令官はやっぱりエグゾギルムの奴か?」
半ば予想しながらもロアが訊ねる。
「ああ、まあ一応飛行艦隊の司令官だしな。そもそも今回の出兵を大臣達に発案したのは、あの陰険野郎だろ」
そう吐き捨てるように言うガルナ、どうやら攻撃の矛先を司令官に変えたらしい。
ロアの上官にあたるエグゾギルム提督は、ヨークきっての名門の出身であったが、その傲慢さから部下の信望は薄かった。
「あの野郎、ガリュードやエオリアまで勝手に出征軍に加えやがって、俺らの部隊を何だと思ってやがる」
ガリュードもエオリアも優れた騎士であり、本来はロアの部隊に属しているのだから、ガルナの怒りも当然であった。
「それだけじゃないぜ、ロア。 危なくミーナの奴まで連れてかれるところだったんだからな」
「ミナリーまで? 本当か?」
その一言にさすがにロアも驚く。
ミナリーもまた、ロアの部隊に所属する幕僚の一人である。
現在14歳と、まだ子供と言ってもいい年齢の少女だが、その智謀と指揮能力はロアも認めるほどの逸材なのだった。
「何とか阻止はしたけどな。 あのロリコン野郎、もしかしたらそれが目的で出兵を発案したんじゃないのか?」
などと凄まじく辛らつな言葉を続けるガルナ。
いつの間にか陰険野郎からロリコン野郎へと呼び方を変えている。
「いくらなんでもそりゃないと思うが……。確かにあの司令官にはそんな噂があるけど……って、今はそれどころじゃないだろ」
話が妙な方向に行きかけたので、慌てて本来の方向に戻そうとするロア。

「あ、すまん、そうだった。で、これからどうなると思う、ロア?」
「そうだな……俺の予想どおりなら、2、3日中にもジグリムの本隊がここ、フラムエルクに向かってくるだろうな」
「出撃した部隊が陽動に気づいて戻ってくる前に、王都を落とすつもりか? だがそれだと時間的に厳しいと思うが……」
もしジグリムの本隊が王都に向かって出撃しても、到達までおそらく一週間はかかる。
それだけあればヨークの主力も引き返して来れるだろう、と言うのがガルナの意見だった。
「ああ、たしかに間に合うだろう。ただしそれはジグリムが南の国境から攻めてくれば……の話なんだ」
「!? どういう事だ? ジグリムが我が国に攻め入るには南側から攻めてくるしか……」
驚愕するガルナの言葉を制すると、ロアは世界地図をテーブルに広げる。
「見てみろよ、ヨークに隣接する国はジグリムだけじゃない。他にもう一つあるだろ?」
「………? アガルティア……だよな?」
「そう、そして今ジグリムは、アガルティア領に侵攻中の部隊が多数存在する」
「そりゃそうだろ、あの二国は戦争中………まさか……!!」
ようやく理解したらしく、絶句するガルナ。
ジグリムは現在アガルティア方面に侵攻している部隊を、そのままヨークへ方向転換させ王都を襲う……ロアはそう言っているのだ。
「このルートなら王都のすぐ東側の国境から攻め込める。こっちの主力はとても間に合わないだろうさ」
「…………」
顎に手をあてて、ガルナがううむと唸る。
本人は気づいてはいないが、これは彼が考え込む時のクセだった。
「まあ、これはあくまでも俺の予想だがね。案外、ジグリムの奴ら、大臣達の言うように正面から堂々と戦うつもりかもな」
考え込む戦友を気づかったのか、ロアはそんな楽観論を口にしてみる。
「……とても本気でそう思ってるようには見えんがね」
が、あっさりとそう言われ、苦笑するしかなかった。
付き合いが長いと言うのも、時に不便なものだ……などと言いたそうな顔である。

「ま、どっちにしても準備をしておくにこしたことはないさ。現在残ってる戦力はどんなもんだ?」
「7隻」
「………は?」
「だから飛行艦艇が7隻。以上」
思わず聞きなおしたロアに、ガルナは淡々と答える。
「………装兵機は?」
「無い。1機残らず出征軍に持ってかれた」
またも淡々と報告するガルナ。
更に俺やフランの機体も整備中で一週間は使えん、と付け足した。
「………………」
今度はロアが絶句する番だった、まさかそこまで少ないとは思ってなかったのだ。
「それでは頼りにしてますよ、提督」
まだ絶句しているロアにそう言って敬礼すると、ガルナは部屋を出て行った。
出て行く時に、大臣どもの大馬鹿野郎が、と捨て台詞を残して。

「…………ふう」
残されたロアはというと、名残惜しそうな顔で作りかけの帆船模型を見て、一つため息をつく。
一瞬、現実逃避したくなったようだが、さすがにまずいと思ったらしい。
「さて……どうしたものかね………」
一人そう愚痴ると、うんざりした顔で何やら考え始めるロア。
ジグリムの大兵力が王都に向けて進行中、との報がフラムエルク城にもたらされるのは、この2日後の事である。


-続く-

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