猫々蹴球

ねこねこしゅーきゅー、と読むと大吉です。デレステブログになりつつありますが、アニメ感想と投稿SS、サッカーもありますヽ( ´▽`)ノ

アカデミー・ライフ 第17話

『アカデミー・ライフ』

第17話 34 years ago -反撃-



形勢は完全に逆転した。
数の上ではヨーク軍68隻、ジグリム軍73隻と、ほぼ互角ではあったが、今回は指揮官の能力に差がありすぎた。
援軍との合流を果たすやいなや、ロアは全軍を完全に指揮下に置き、まるで手足のように動かし始めたのだ。
「ガルナ隊は右翼、プレーツ隊は左翼、それぞれ前進しつつ包囲態勢を取れ!!」
「了解!!」
「了解」
司令官の指示に両翼は完璧に対応した。
ほとんど乱れもない動きで、ジグリム軍の側面に展開していく。
「ヨーク軍、左右に展開!! こ、このままでは包囲されます!!」
「なに!? ぜ、全軍ひとまず後退!! 包囲される前に船隊を広域に展開せよ!!」
旗艦バルレートの艦橋でディルバス大将が叫ぶ。
だがジグリム軍の反応は鈍かった。
先ほどまでの攻勢で突撃態勢を取っていた為、後退するのに思いのほか時間がかかったのだ。

「両翼、展開完了です!!」
「よし、撃て!!」
ミナリーの報告から間髪いれず、ロアが手を振り下ろす。
それを合図に3方向から一斉に砲撃が開始された。
「ヨーク軍、攻撃来ます!! うわっ!!!」
オペレーターの報告が爆音にかき消される……最初の一撃で艦列の外周部にいた数隻が爆発炎上したのだ。
更にそこへ立て続けに砲撃が炸裂し、無数の火球が空に次々と生み出されていく。
「おのれ………態勢を立て直せ!! こちらも反撃せよ!!」
ディルバスが懸命に叱咤するが、3方向から包囲されていては効果的な反撃ができる訳もない。
しかもヨークの提督達は、ロアを始めとする名将揃いなのだ。
「ま、まさか……ここまで差があるというのか………」
散発的な反撃をいなし、艦列の乱れたポイントに集中砲火を浴びせてくる敵の指揮能力の高さに、ディルバスは戦慄すら覚えていた。
司令官がそんな状態である以上、部隊の士気が上がるはずもない………ジグリム飛行船隊の全滅は、もはや時間の問題だった。

敗北に向かって一直線に進んでいるのは艦隊だけではなかった。
地上でガリュードとエオリアを相手にしている装兵機部隊もまた、圧倒的な力の差というものを思い知らされていた。
「はああッッ!!」
両者の気合いと共に剣が一閃するたび、両断され地面に崩れ落ちていくジグリムの装兵機。
その数はすでに半数の11機にまで減少している。
「な、何をしている!! 敵はたった2機だぞ!!」
隊長らしき兵士がそう叫ぶが、何しろ相手はただの2機ではない。
その操者は、騎士の国ヨーク全体でも5指に入る剣腕の2人なのだ。
「ねえ、ガリュードくん。残りの敵、どっちが多く倒すか勝負しよっか?」
「あのですね、エオリアさん……これは遊びじゃないんですよ?」
「も~~冗談よ、じょ・う・だ・ん♪ 相変わらずマジメなんだから………そんなんじゃ女の子にもてないわよ?」
「別にいいですよ、もてなくても…………っと」
軽口を叩きながら、背後から襲いかかる敵をあっさりとかわすガリュードのドルファー。
「ていッ!!」
そのまま前によろける形となった敵装兵機を、エオリアのガーネティアが一太刀で破壊する。
「まったく……健全な青少年がそんな事言うなんて……うう、お姉さんは悲しいわよ……」
「………先、行きますね」
「あ、ちょっと、待ってよ~~」
呆れたように言うと、敵に向かってドルファーを駆るガリュード、そして剣を構え直すとガーネティアで後を追うエオリア。
本人達の意見はともかく、他人から見ればけっこういいコンビだった。

勝敗が完全に決したのは、ヨーク本隊到着から約3リス(2時間)後。
ついに戦闘継続を断念したジグリム軍が退却を開始したのだ。
もはや艦隊とは呼べないその無残な姿からは、出征当初の面影は微塵も感じられなくなっていた。
「敵、退却していきます!!」
「よおし!! ざまあみやがれ!!」
その報告に、フランを筆頭とした大歓声が湧き起こる。
ヨークを、自分達の国を守りきったのだ……どの兵士の顔も、疲労を上まわる充実感に包まれていた。
「ふう………なんとか終わったな。 お疲れさま、ミナリー」
参謀に向かって、そう笑いかけるロア。
「あ……はいっ、ありがとうございます、提督」
『お疲れさま』の一言に嬉しそうに微笑むミナリー。
それは彼女にとってどんな褒美よりも嬉しい言葉なのだ。


「敵味方の負傷兵の収容、及びその他の事後処理、全て完了。 フラムエルクへの帰還の準備、整いました」
「了解、さてと………」
プレーツの報告にうなずくロア。
戦闘終了から数時間後、エルクアーツの艦橋にロアとその幕僚団が全員集合していた。
ロア、ガルナ、プレーツ、ミナリー、フラン、ガリュード、エオリア。
ほんの数日のはずだが、ずいぶん長いこと離れていたような気がする……程度の差はあれ、全員がそう感じていた。
「全員、ご苦労だった。残りの本隊とも合流した事だし、これより王都に帰還する」
「はっ」
6人が同時に敬礼する。
そこまでは完璧なのだが、そこから先の会話がどうにも緊張感に欠けていた。
「しかしエオリア達も無茶するよな、まさかエグゾギルム司令官を殴りつけるとは思わなかったぜ」
と、フランがニヤニヤと笑う。
「だ~か~ら~!! 殴ってなんかいないってば!!」
「……殴ろうとはしてましたけどね……」
「何か言った……? ガリュードくん……?」
エオリアの目が光る。
「ま、まあまあ……そのおかげで、わたし達も助かったわけですから……」
「うんうん、さすがミーナ、ちゃんとわかってるのね。ほんと、いい子だわ~~」
「あ、あはは………」
そう言ってミナリーの頭をよしよしと撫でるエオリア……撫でられてる方は、明らかに嫌そうである。

彼らの話題は、現在医務室にいるエグゾギルム司令官についてだった。
先ほどまでの情報を総合すると、こういう事らしい。
ロアから送られてきた航路を見たエグゾギルムは、早速その航路に向けて進路を取った。
だが実際に航路に入ってみてすぐ、あまりの気流の激しさに驚いた彼は、「危険すぎるので中止」の命令を出してしまう。
当然それに反対したエオリア達は、司令官に激しく詰めよった。
その際、偶然発生した乱気流の影響で艦が揺れ、不幸な司令官は机に頭をぶつけて気を失ったらしい。
まあ、単なる軽傷ですんだ事だし、なによりそのおかげでロア達の救援に行く事ができたのだから、結果オーライと言うべきだろう。

ちなみにその話を最初に聞いた時、
「重傷なのか!?」
と、フランは期待してるような声を出し、ガルナにいたっては
「どうせ偶然が起きるなら、床がぬけて艦外に放り出された、とかの方がよかったのに」
などと、さらにひどい事を平然と言ってのけた……。

『やれやれ……我ながらとんでもない連中を率いているな……』
なおも艦橋でわいわいと騒ぐ仲間達の姿に、ロアの顔に苦笑がもれる。
それでもこの雰囲気に心地よさを感じるのは、自分も「とんでもない連中」の1人という事なのだろうか。
「ま、それもいいか………」
そう誰にも聞こえないように呟くと、ロアは今回の作戦における最後の指令を出す。

「全艦、王都へ向けて出発!!」

と………。


後に「グラスシェール空域会戦」と呼ばれる事になる戦いは、こうして幕を閉じた。
(もっとも「7隻で5個船隊を手玉に取った」というフレーズが有名になりすぎた為、その会戦名は人々の記憶にあまり残りはしなかったが)
文句無しにヨーク軍の完勝であり、それは両軍の相対被害がはっきりと証明している。
ヨーク軍の被害が10隻に満たなかったのに対し、ジグリム軍の被害は艦艇136隻、装兵機にいたっては全滅、と出征時の兵力の9割を失う大敗北であった。
そんな中、あえて救いを挙げるなら、ミナリー達に助けられた多数の負傷兵が数ヶ月後に自国へ帰還してきた事だろうか。
「もう戦場で会う事がないといいですよね………」
兵士達を送り出す際のミナリーの言葉に、ロアは黙ってうなずく事しかできなかったと言う……。


-続く-

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