猫々蹴球

ねこねこしゅーきゅー、と読むと大吉です。デレステブログになりつつありますが、アニメ感想と投稿SS、サッカーもありますヽ( ´▽`)ノ

アカデミー・ライフ 第21話

『アカデミー・ライフ』

第21話 ハートフル・ランチタイム

 
 
「う~~おなかすいたぁ~~」
4時限目の授業の終わりを告げるチャイムと共に、クルルは机にばたっと倒れこんだ。
後ろの方から何人かの友達の笑い声が聞こえたような気がしたが、そんな事を気にしていられる状態ではない。
それもそのはず、彼女は今日、学生にとって永遠の悩みである「朝寝坊」の魔の手にかかってしまい、朝食を食べていないのだった。
「うう……しかもなんでこんな日に限って、1,2時限目が体育なのよお………」
机に突っ伏したまま、恨めしそうに呟くクルル。
自分が悪いとわかってはいるのだが、こういう時は理性よりも感情が優先されるものである。
まあ体育の内容が『マラソン』だった事に関しては、さすがに同情の余地があるかもしれないが。

だが彼女はいつまでも倒れているわけにはいかなかった。
視界の端にぞろぞろと教室を出て行く生徒達の姿を認めたからだ。
彼らの目的は言うまでもない……自宅組ではない生徒達の生命線、学生食堂。
もちろん留学生であるクルルにとっても同様で、そこで売っているパンや弁当こそ、午後の授業を乗りきるための必須アイテムであった。
「……急がないとまた売り切れちゃうよね……しょうがない、もうひとがんばりしよ……」
まもなく戦場と化すだろう売店にうんざりとしながらも、クルルは何とか立ち上がった。

「あ、クルルちゃん、ちょっと待って!!」
ふらふらとしながらも教室を出て行こうとしたクルルだが、突然のそんな声に足を止めて振り向いた。
その視線の先でメルヴィとミルカが、彼女の親友2人が弁当箱の包みを手に立っている。
「あ、ゴメンね、2人とも。パン買ったらすぐに行くから、また先に行ってて。今日も中庭でしょ?」
「うん、いつものとこ……あ、ちょっと待ってってば、クルル!!」
こちらが返事をするのと同時に走り出そうとするクルルに、慌ててミルカが大声で呼び止める。
「ああ、もう!!早く行かないと売り切れちゃうんだってば!!」
「いいからちょっと落ち着きなさいって!!今日はそんな心配しないでいいんだから!!」
「へ?」
思わずきょとんとしたクルルに、メルヴィはにっこりと笑いかけると、持っていた包みを差し出した。
「あのね、これ……ママがクルルちゃんにって。今日のぶんのお弁当だよっ」
「ええ!?パルディアさんが!?」
「うん、えっとね、ママってば今朝は多く作りすぎちゃったんだって。
それでメルヴィだけじゃ食べきれないから、クルルちゃんのも作ろうって事になって」
「…………………」
「ど、どうしたの、クルルちゃん?あっ……もしかして迷惑だったかな……」
急にうつむいたまま黙ってしまったクルルに、メルヴィが心配そうに声をかける。
「あ……」
「……あ?」
親友のそんな呟きに、メルヴィがそっと近づいた瞬間……。

「ありがとーー!!!!メルヴィーー!!!!」
「わわっ!!」
教室中に響くような大声と共に、クルルが思いきり抱きついてきたのだった。
野生のバルアミーも顔負けなスピードに、メルヴィは避ける暇もなかった。
「うう……まさかアカデミーでパルディアさんの料理が食べられるなんて……。今日の苦労はきっとこの為にあったんだわ……」
「お、大げさだよぉ、クルルちゃん……。そ、それより早く行かないと、いつもの場所取られちゃうよ」
抱きしめられたままの体勢で、必死に「早く行こう」とせかすメルヴィ。
実はかなり苦しいのだが、喜んでいるクルルを見てると口に出す事はできなかった。
しかも自分達の周りには、クラスの友人達が何事かという顔でどんどん集まってきており、はっきりいって恥ずかしい。
一方、完全に取り残された形のミルカはというと、
『これはこれでなかなかいい絵かも……カメラとか持ってくればよかった……』
などと思いながら、いつの間にかちゃっかりと周りのギャラリーの1人となっていた……。



「………はあ、おいしかったーー!! ごちそうさま、メルヴィ!!」
最後のチキンサンドを食べ終えると、クルルは心から満足そうにぺこりとおじぎをした。
学食や購買の食事も決して不味くはないが、やっぱり家庭の手料理にはかなわない。
「えへへ、よかった、喜んでくれて。ママにちゃんと伝えておくね」
その笑顔につられるように、メルヴィもまた嬉しそうに笑う。
こちらはまだ半分ほどしか食べ終えていないが、これは彼女が遅いというよりクルルが速いというべきだった。

彼女達がいるのは、アカデミーの中央に位置する中庭。
穏やかな陽射しに照らされたその場所は、毎日昼休みにはたくさんの生徒達で賑わう、アカデミーの人気スポットである。
もちろんメルヴィ達にとってもお気に入りの場所であり、そこの芝生の上でお昼を食べるのが毎日の楽しみだった。

「ほんとにパルディアさんって、料理上手いよねっ。これなら毎日作りすぎちゃってもいいかも……なんてね」
芝生の上にニーソックスに包まれた脚を伸ばしながら、クルルは正面にちょこんと座る親友に笑いかけた。
「あ、それならまた作ってもらうね。ママはお弁当とか作るの大好きだから、きっと喜ぶよ」
「ほんと!?それじゃ、お願いしちゃおうかな……」
サンドイッチを片手に「うん!!」と笑顔でうなずくメルヴィ。
母親の料理を誉められた嬉しさと、親友の喜ぶ顔をまた見られる嬉しさ。
それは彼女にとって、テストで100点を取る事などよりも、はるかに嬉しい事なのだ。

「ねえねえ、クルル。そんなにおいしかったの?」
そんな2人のやりとりを微笑ましそうに見ていたもう1人の親友が、興味津々といった感じで声をかける。
「うん!!よかったらひとくち食べてみる?……って、ゴメン……お弁当箱、もうからっぽだった……」
「あはは……じゃあミルカちゃん、メルヴィの少しあげるね」
すまなそうにうつむくクルルに代わって、メルヴィが自分のランチボックスからサンドイッチを1つ取り出す。
「あ、ありがとう、メルヴィ!!それじゃ、遠慮なく………もぐもぐ………」
「どう?」
「………ほいひい!!!」
少しだけ緊張した顔で見ていたメルヴィだが、ミルカのその一言にほっと息をつく。
まだ飲みこんでないのに喋ったせいで聞き取りにくかったが、ミルカの笑顔から「おいしい」と言ったのがはっきりとわかった。
「ね、おいしいでしょ!?」
まるで自分の料理を誉められたかのようにクルルが得意そうな顔をする。
「うん!!このサラダサンド、お店で売ってるやつよりずっとおいしい!!」
「そうそう!!あれはたしかに………え?サラダサンドなんか入ってたっけ……?」
不思議そうな顔でメルヴィのランチボックスをのぞきこむクルル。
作りすぎたのなら中身が同じはずなのだが、たしか自分のにはサラダサンドは入っていなかったのだ。

「ど、ど、どうしたの、クルルちゃん?メルヴィのお弁当なんか見ても、お、おもしろくないよ?」
何故か慌てた口調で言いながら、ランチボックスの中身を隠しているメルヴィ。
その間に何やらミルカの方へ向かって、目で合図らしきものを送ろうとしている。
「……あ!!ご、ごめん、クルル!!今、わたしが食べたのサラダサンドじゃなくて……ええと……そ、そう、チキンサンド!!
ひ、ひさしぶりに食べたからうっかり間違えちゃったみたい……あ、あはは……」
ようやく事態に気づいたミルカが、メルヴィよりも更に慌てて前言を撤回する。
どうすればチキンとサラダの味を間違えるんだろ……言った直後に本人もそう思ったが、これ以上言い直すわけにはいかなかった。

「え?そ、そうなの?め、めずらしい間違え方するね、ミルカ……」
「も、もう……ミルカちゃんってば、いきなりおかしなこと言うんだから……」
「あ、あはははは……………」
親友の味覚に呆れたような顔をするクルルと、まだ慌てているメルヴィ、そしてもはや笑ってごまかすしかないミルカ。
「………?」
何かが心にひっかかりながら、中身が空になったランチボックスをじっと見つめるクルル。
そう……『作りすぎた』にしては彼女の好物ばかりが入っていたランチボックスを………。


-続く-

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